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ワシントンからロンドン行きのブリティシュ航空の夜便の窓側席はとても狭いが、その往復航空券の値段がエコノミークラスでちょうど600ドルであった。そこで、メリーランド州在住の医師ジェームスパワー博士はロンドンでお正月を過ごすために、妻と母の航空券も購入した。パワー博士は、彼の長い足を縮める様にして狭い窓側席で、寝ようとしていた。狭い窓側席ではほとんご身動きできない状態で、約7時間のフライト後の翌朝、ロンドンに着いた時は、彼の両足がはれていた。しかし、身長186cmの産婦人科医であるパワー博士は、日頃から足首がはれて太くなってしまっている妊婦を元気づけるのに慣れていたので、彼自身の両足のはれについても、歩き回ったら治るに遠いないと軽く考えていた。ウェストミンスター・カテドラルを観光して、その後休むためにホテルヘ戻った。そして7時間後、左足のふくらはぎのひどい痛みで目が覚めた。彼はけいれんになったときには筋肉をストレッチするのが良いと思い、よたよたと部屋を歩き回った。翌朝、彼の状態は一層悪く、ほとんど歩けずその痛みはもっとひkくなっていた。それでも、せっかくのバケーションをエンジョイしなくてはと思い、ロンドン市内をよたよた歩き回って、帰宅の地アメリカヘ飛んだ。彼は再び、医者として手術と患者に追われる忙しい日々にもどった。そして、彼は自分の左足の痛みと、はれをあまり気にしないように努力していたが、それは1週間が限界だった。ようやく、彼は血管内科の医師に自分の足の痛みのことを相談した。
その診断の結果、足のふくらはぎの静脈に危険な血液凝固が発見された。早速、パワー博士は抗凝固薬のヘパリンで治療するために病院に入院することになった。それにしてもパワー博士は運が良かった。凝血の固まりが壊れて心臓を通過し肺に入り込んでもおかしくない状態だった。もしこようなケースで凝血の固まりが肺に入ったら、10〜40%の確率で死亡していたかもしれなかったのだ。
一方、ある筋肉質体型の51歳の医師は、今までに聞いたこともないような病気にかかり苦しんでいる。この病気についてある研究者が“エコノミークラスシンドローム”病と言った。これは、現代航空機を利用する人が増え又、航空会社では今のところ機内のスペースに関する法律的な規制が自由なので、エコノミークラスの席を増やしている。
機内の狭い席に体を押し込めながら長時間のフライトの後、足の深部静脈に凝血をつくってしまった患者のことをイギリスの研究者によって“エコノミークラスシンドローム”と名付けた。
医学の専門家達は、このように狭い場所にほとんど身動きできない状態で長時間座っていることが足に負担を与え、凝血を作ってしまう要因だということを、認識していた。この症状の根源は、航空機を利用する人だけではなく、またエコノミークラスを利用する人に限ったわけではない。
1940年に初めて、この症状の問題をリポートに取り上げた。そのリポートには“血液凝固により死亡者が増える”(下肢にできた凝血の固まりが壊れて、それが肺に入って死亡するケース)。というのも、第2次世界大戦中、ドイツの飛行機がロンドン市内を爆破させていた時(これを”B1itz”と呼ぶ)市内に住む住人は長時間、地下豪で座り続けて身の危険を安じていたため、足に血液凝固ができていた。その頃からすでに、発見されていたと書かれている。それから、長時間のドライブや、夜シアターなどで座りっぱなしで過ごすというようなことも、血液を凝固させやすい要因だが、やはり、飛行機で長時間座りっぱなしというのが一番リスクが高い。
深部下肢静脈瘤の名医としられているハーバード病院外科医ジョン・ホーマンズ博士によって1954年、飛行機の長旅により足に凝血ができるということを記述した本を初めて出版した。しかしながら、飛行機の長旅が足の深部静脈血栓症になりうる危険性が高いということはめったにないと信じられてはいるけれども、この問題に関しては以前にもましてより盛んに研究されている。しかし、飛行機の狭い席に長時間座り続けて、いったいどのくらいの率で下肢に凝血の固まりができるのかどうか、又、機内のイスとイスとの距離をどのくらいにしたらこのような症状になるリスクを少なくできるのかということについては、まだ誰も研究していない。政府の機内についての規制は、今のところ、非常口の前に通路があることを条件とすること以外、イスとイスとの距離については、法律的には決められていない。
オハイオ州レイトン市のライト州立大学医学部、コミュニティベルス、航空宇宙のディレクターであるスタンリーRモルラーによると、航空会社はこの問題を研究し、この症状になるリスクが乗客にあることを知らせることよりも、問題を無視することに力を入れていると、言っている。
さしあたって、乗客は航空機を降りた後、まもなく足にできた凝血の固まりが肺に入って急死することになる。1986年のロンドン・ヒースロー空港での3年間の研究からは、下肢にできた凝血の固まりが肺に入って急死するというケースの61人中18%が長時間飛行機に乗っていたためとされている。
パワー博士によると、飛行機の乗客は、凝血を作るチャンスを増やすリスクをかかえているが、多くの乗客がそれを認識していない。また、静脈瘤、ガン、喫煙者、下肢に凝血のある人々、足に怪我のある人、ベッドに寝たきりの人、手術のために全身麻酔をした入院患者にもこのリスクの要因がある。妊娠、避妊薬を飲んでいる婦人、そしてホルモン剤投与の人にも凝血をつくる可能性を増進させる。肥満者、高齢者、背の高い人にはリスクが高い。
凝血をつくらないようにさせる一番良い方法は、飛行機の中で立って歩き回るようにすることなのだが、パワー博士が言うには、機内iヘ乗務員が乗客に立って歩き回らないように注意しているし、乗客が座るまで、飛行機が飛び立つことができない事を注意するので、乗客は機内に入ったとたんに身動きできず、出発すると今度はカートを押した乗務員が通路に立っているので、ほとんど機内では歩けないことになる。多くの航空機にはビジネスクラスとエコノミークラスとの間にカーテンのしきいがある。機内の小さなキッチンのところに乗客がいけぱ、乗務員に、“邪魔しているよ、どいてくれよ”とでも言っているかのような態度をされてしまう。ジョン・ホプキンズ病院で怪我のリサーチと予防の研修と、健康ポリシーとマネージメントもしているスーザン・Pペンカー博士は、乗務員は飛行機が揺れる時に乗客が怪我をするのを心配していると言っている。ベンカー博士が考えていることは、飛行機が揺れている時に乗客が怪我をする確率より、機内で身動きとれずににじっと座り続ける方がずっと生命の危険になるうる確率が高いとみなしている。
パワー博士は、2月ブリティッシュ航空あてに、自分自身の凝血の症状を説明し、今後他の乗客にもその危険性があることを早く乗客に伝えてほしいと書いた内容の手紙を送った。ブリティッシュ航空のお客様相談室エグゼクティブは、パワー博士に次のような内容の手紙を今月返送した。“私たちは乗客の健康が、大切なことをいつも考えていますし、次の時代に向けて機内のイスの配置について開発しています。しかし機内のイスの配置を変えるのは、運賃が高くなるかもしれません。これはブリティッシュ航空のポリシー(空の旅をリーズナブルな価格で皆様を誘導いたします)に反することになります。また、ブリティッシュ航空のPR担当ジョン・ランプルは、機内に置いてある雑誌の中で、乗客に健康を保つためにはどうしたら良いかという記事をとりあげている。
その記事というのは、
1)ゆったりとした服を着て下さい。
2)お酒を飲みすぎないようにして下さい。(脱水症状となってしまうため)
3)足のふくらはぎの筋肉をストレッチするエクササイズの説明。
また、ノースウェスト航空では、大陸間横断の長旅の終わりに近づくと、6分間のエクササイズ・ビデオを乗客に見せている。半分以上の乗客がエクササイズを実行すると言う。しかし、ノースウェスト航空のエクササイズ・ビデオにも、ブリティッシュ航空の機内誌の中にも、どこにも機内では歩き回る方が良いということを主張していない。
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